Skip to main content

廃墟の町、くず拾いで生きる

包囲解放後のシリア・デリゾール
, WFP日本_レポート

3年に及ぶ包囲攻撃から、ようやく解放されたシリア東北部のデリゾール。人々は廃墟と化した町で、厳しい暮らしを強いられています。戦闘が終わり、これから生活再建に向かうはずだ-。そんなわずかな希望を頼りに、人々は今日を生き延びています。

1*sMGZuf0jG-S8V_2vBGQePQ.jpeg
廃墟の中、鉄くずを探し歩きまわるアリ Photo: WFP/Marwa Awad

大工の仕事失い、自宅も破壊

デリゾールの荒廃した通りで、一人の中年男性が素手でがれきの下に埋もれたくず鉄などを探していました。包囲される前は、町の中心部だった場所です。

男性は4人の子供の父親、アリ。あちこちのがれきの山の中へ消えては、アルミのなべなどを拾い、カートに入れることを繰り返します。くず鉄や金物拾いが、今の彼の生計を支えています。

「紛争が始まる前、私は大工でした。でも今は家族に食べさせるため、くず売りをしています」

彼の自宅は、この中心街のすぐ近くにありました。「家はあそこだよ。そのがれきの山のすぐ後ろさ」彼が指さす先もやはり、廃墟と化しています。

以前、彼は収入の多い大工でした。今、一家はわずかな収入で暮らさなければなりません。彼が見つけた「掘り出し物」を商人に売っても、良くて2000シリアポンド、米ドルにしてたった4ドルにしかなりません。商人はその品物を首都ダマスカスへ運び、大きな市場で売るのです。

「内戦前は、こんなちっぽけなお金で暮らすなんて考えられなかった。でも今は、わずかなお金で暮らすことを学んだんだ」彼は言います。

がれきの山、不発弾の危険潜む

内戦は今もなお、シリアの人々を危険にさらしています。アリがしているくず拾いにしても、不発弾が潜んでいるかもしれない場所での、危険な仕事です。しかしアリは絶望に近い状況の中、恐怖心すら麻痺してしまいました。

「私が自分の命を危険にさらすことで、子どもたちは生き延びているんだ。包囲の間、妻と私はたびたび食事を抜いて、息子と3人の娘たちに食べさせたものだよ」

5年続いた内戦と3年にわたった包囲によって、デリゾールの町の80%は廃墟となってしまいました。町に帰還した家族は、損害が比較的少なかった地域で、ひしめき合って暮らすしかありません。家賃は高騰して1カ月100ドルを超え、家賃をシェアするため複数の世帯が同居せざるを得ません。

空中投下が命をつなぐ

第二次包囲攻撃の間、国連WFPは航空機による物資の空中投下を実施し、アリのように街に閉じ込められた10万人近くの人々へ命をつなぐための食糧を届けました。包囲網が解除されるまでに、国連WFPが行った空中投下は、309回に及びました。

「生活は厳しかったが、支援のおかげで包囲網の中でも生き延びられました」と、アリは感謝の言葉を口にします。食べ物を買うお金を、家族に必要な別の品々に回すこともできました。そして、空中投下によってアリが受け取った食糧は、一家が必要とする量の9割を賄ってくれました、と付け加えました。

現在、国連WFPは計7万5000人分の食糧を、デリゾールとその周辺地域に配っています。

希望を胸に

廃墟の中で、アリは今、いつか大工に戻って町の再建を手助けする日が来る、という希望を抱いています。

「私は自分の仕事に戻って、破壊された家々を立て直す手伝いをすることが夢なんだ。こんな状態が長く続かないことを、神に祈っているよ」アリは今の彼の命綱であるスクラップの山を指して、そう話しました。

シリアの子どもたちと家族を救うため、ご支援をお願い致します。寄付はこちら