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打ち砕かれた過去、果敢に抵抗する精神:南スーダンの母たち

, WFP日本_レポート

暴力にさらされながらも生まれる美しさ-明るい未来への希望

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南スーダンでは女性が人口の過半数を占めていますが社会や政府で権威ある地位についている人は、ごく少数です。写真:WFP/Gabriela Vivacqua

いかに無情な人でも、南スーダンの女性たちが受けてきた暴力の話を聞けば心が痛むでしょう。しかし女性たちの成功談は、世界が真に良い場所になる可能性があることを思い出させてくれます。

初めてこのような恐怖に裏打ちされた人生物語を聞くと、極端な事例に感じられるかもしれません。しかし、すぐに南スーダンでは残念ながら一般的なのだということに気付かされます。暴力の中に生まれ、現在も権力をめぐる激しい争いに巻き込まれている南スーダンでは女性が悲惨な扱いを受けていることが知られています。女性に対する暴力が蔓延しているのです。しかし、すべてが失われたわけではありません。

世界食糧計画(国連WFP)は食料および栄養支援を行うとともに、ジェンダーへの配慮や保護の観点もその活動に取り入れています。その過程で、南スーダンにおいて男女が平等な未来を築く手助けを、女性1人1人に対する支援を通じて行っています。

ここに、南スーダンで国連WFPが支援している女性たちの物語を記します。

エスター・オリバー(34才)

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ジュバのグレイにある家で生後2週間の三つ子と休むエスター・オリバー。写真:WFP/Gabriela Vivacqua

西エクアトリアのカティバ村で生まれたエスターは「我が家」の概念に苦しんでいます。エスターにとって「我が家」とは安全でいられる場所です。最近まで、彼女は転々と移動してきました。

「私たちは村から村へと移り住んできました。時には森の中で暮らすこともありました」とエスターは言います。「主要道路の近くにはいることができず、常に隠れていました」

子どもの頃の話をすると、目に涙が溢れます。人生は彼女にとって絶え間ない挑戦でした。まだ若いにも関わらず、彼女はすでに国内で生死の流れを見てきたのです。

どこにも定住することができず、ましてや学校に通うことなどできず、13才で初めて結婚しました。それが彼女にとって唯一の選択肢に思えたのです。

「父は戦闘から逃げようとして、私が9才の時に亡くなりました。父が亡くなってから人生はさらに過酷になったのです」

同じ状況に置かれた、ほかの多くの少女のように、結婚がたった1つの逃げ道だったのです。

「多くの困難に直面していたため、結婚することに決めました。問題が消えてなくなると思ったのです」

2度目の結婚をし、6人の子どもの母となったエスターは国連WFPの支援を受けながら子どもたちを育てています。首都ジュバにあるグレイ保健センターから、自分と3つ子たちのための栄養支援を受けています。また、保健グループ仲間から家族計画および健康に関するサポートも受けています。新たに得た知識を力に、エスターは近所の収入創出プロジェクトに参加する予定です。

「私はいま幸せです。やり直す機会を得ることができました」

ビオラ・ジェームズ

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4人のうち3人の子どもと家の中にいるビオラ・ジェームズ。 写真:WFP/Gabriela Vivacqua

ビオラが4人の幼い子どもと住んでいる家には部屋が1つしかありません。高温多湿な午後のジュバで家の中に座っている彼女の額には汗が浮き出ています。

彼女は住まいを「保護された」家と呼んでいます。窓はありません。

「子どもを守るために、このような家を建てました」ビオラは自分の恐怖を説明します。「私は子どもたちだけと住んでいるのです。ここは安全な場所ではありません」

彼女は暴力に苦しみながら育ちました。国が安全と思えないなか、少なくとも家を子どもたちにとって安全な場所にしようと決心しています。

「子どもたちには、ここは私たちの要塞だと伝えています。ここにいれば安全です」「私が常に守ります。家族のためなら何でもします」

ビオラの子どもは全員、国連WFPから栄養支援を受けています。

「以前は、私は何も食べないこともありました。食料支援を受けることで最も困難な時期を乗り越えることができました」

コル・カン

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妊娠7カ月のお腹を見せてポーズをとるコル・カン。国連WFPからの支援と近所の保健センターのおかげもあり前回の出産はスムーズでした。写真:WFP/Gabriela Vivacqua

紛争下で出産することは大変困難です。近年の紛争に巻き込まれたコルを含む多くの女性にとって、妊娠は死刑宣告に思えました。

しかし、国連WFPとNGOおよび政府とのパートナーシップによって、妊娠期間を過ごすことが比較的容易になってきました。この取り組みでは子どもの栄養不良の予防と治療および妊娠中または授乳中の女性のための特別な食料を提供しています。コルにとっては大きな助けです。

「夫は危機の最中に亡くなりました。今は私が子どもの面倒をみる必要があります。私が食べさせていかなければならないのです」「この国で生きていくことは困難です。特にキャンプでは難しいです。しかし少なくとも食べ物の心配がないので、今日を生き延びることができます」

国連WFPの対応

2018年に国連WFPは南スーダンで約530万人の弱い立場に置かれた人びとを支援しました。2019年現在、南スーダンの食料不足は切迫しています。支援者からの十分なサポートを得たうえで、国連WFPは年末までに支援を広げ540万人の人びとに届けることを計画しています。対象者の半分以上が女性と女の子です。